メキシコで期日や時間の約束ををする場合、気をつけなければならない言葉があります。
特にビジネスにおいて、この言葉の使い方を間違えると大きな問題に発展しかねません。
少しスペイン語を勉強された方なら、次の文章の意味は容易に理解できると思います。
Inscripciones abiertas hasta el 15 de agosto.
「お申し込みは8月15日まで」
ところが、メキシコや一部ラテンアメリカの国、地域では全く逆の意味に解釈される場合が多いのです。すなわち、「お申し込みは8月15日になってから」ととられます。
相手に「〜まで」とうことを伝えたくて期日や時間の約束をしても、hastaを使うと自分の意向とは逆のメッセージとしてとらえられてしまうのです。
私たちの場合、メキシコ人講師らに月の最終日までにレポートの提出をお願いすることがよくありますが
Entréguennos los reportes hasta el último día del mes, por favor.
と言うと、大半のメキシコ人はレポートは月末までではなく、月末になってから提出すればいいんだなと思ってしまいます。
また
Las clases se cancelan hasta el próximo viernes.
と言えば、多くのメキシコ人はクラスは来週の金曜日までではなく、来週の金曜日に、または金曜日以降にキャンセルされると理解します。
困ったものです。では、このような誤解をさけるためには、どうしたらいいでしょうか。一つの策としてはhastaの代わりにantes de…(の前に)を使うことです。
Entrégueme los reportes antes del último día del mes, por favor.
とすれば、レポートは月の最終日前に提出しなければならないんだなとわかってもらえます。ただし、この場合、厳密にはその日は含んでいないので、末日の前日以前という意味になります。ちなみにhastaが「まで」の意味で使われる場合はその日を含みます。
またhastaの代わりにparaを用いることもできます。
Entréguennos los reportes para el último día del mes, por favor.
この場合、時間の範囲というよりもむしろ特定の目的や目標に関連する期限を強調するニュアンスがあります。特定したその日も含まれます。
また期日をはっきりさせる方法として、fecha límiteという言葉も有効です。ズバリ「期日」という意味です。
La fecha límite de la entrega de los reportes es el último día del mes.
とすればレポート提出期日は月の最終日ということがはっきりします。
hastaの用法はメキシコをはじめ一部スペイン語圏で誤用があまりにも浸透し、一般化してしまったケースと思われます。
実際にそのように使われているので、慣れていくほかありませんが、筆者の場合、頭では分かっていても、実生活においていまだにhastaをメキシコ風に使うことに苦労しています。
先日も宅配業者に午後2時までに郵送物を引取りにきてもらおうとして
Vengan hasta las 2 de la tarde, por favor
と言ってしまい、あわてて
Vengan antes de las 2 de la tarde, por favor.
と、言い直しました。
「Hasta… = 〜まで」という固定観念が払拭できずにいます。
ただでさえ、時間の正確さは期待できないお国柄。時間を守ってくれるか、くれないかは相手次第で、自分のコントロール外と言えますが、まずは正しく伝えることから始まります。
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