ビジネスの現場では、時に曖昧な点が生じ、これが誤解や不安を招くことがあります。特に異なる文化間でのコミュニケーションでは、そのリスクが高まります。メキシコなどスペイン語圏のビジネス環境においては、一度得た合意や契約が後から変更されたり、再交渉されたりすることは珍しくありません。また、細部が曖昧なままの契約が残ることもあり、日本人ビジネスパーソンには戸惑いを感じさせることがあります。
そのため、曖昧な点をできるだけ明確にし、ビジネスの進行をスムーズに保つことは重要です。本記事では、ビジネスシーンで役立つ、曖昧な点を明確にするためのスペイン語フレーズを紹介していきます。
曖昧な点を明確にするためのフレーズ
¿Estamos en la misma página?
(私たちは同じ認識を持っていますか?)
これは、全員が同じ理解をしているか確認する際に使える便利なフレーズです。表面的な同意が得られても、後で異なる解釈がされることがあるため、重要な局面で確認することが必要です。
➤ Estar en la misma páginaと似た表現にestar en el mismo canalがあります。直訳すれば、それぞれ「同じページにいる」、「同じ経路にいる」となります。どちらも「同じ認識を持っている」という意味で使われますが、前者は、ある案件について同じ考えや理解を共有していることを示すのに対し、後者はコミュニケーションの質に焦点を当てた表現で、何かが正確に伝わっているかどうかを確認するニュアンスが強いです。
Quiero asegurarme de que entendemos lo mismo.
(私たちが同じことを理解しているか確認したいです。)
前のフレーズ同様、相手が本当に同じ理解をしているか確認するための表現です。
Me gustaría entender mejor lo que has dicho.
(あなたの言ったことをもう少しよく理解したいです。)
このフレーズは、相手の発言に対してさらに理解を深めたいときに役立ちます。相手を尊重する態度を示しつつ、詳細な説明を求めることが可能です。
¿Cómo interpretamos esto exactamente?
(これを正確にどのように解釈すればよいですか?)
同じ文言でも異なる解釈をされる場合があります。このフレーズは、誤解を避けるための確認に役立ちます。
¿Podemos ser un poco más específicos en este aspecto?
(この点についてもう少し具体的にできますか?)
ビジネスミーティングや商談において、話が曖昧なまま進んでしまうことを防ぐための表現です。相手に「具体性」を求める際に、攻撃的に聞こえないよう配慮されています。
➤ 日本語の「具体的な」はスペイン語ではespecíficoの他にconcretoがあります。específico は「特定のもの」に焦点を当て、細部にこだわっているニュアンスがありますが、一方、concreto は「抽象的でないもの」として、実際的で明確な事柄を指すことが多いです。
Para evitar confusiones, aclaremos este punto.
(混乱を避けるため、この点を明確にしましょう。)
誤解を防ぎ、ビジネスを円滑に進めるためのフレーズです。
➤ Confusiones(混乱)はよく使われること言葉ですが、malentendidos (誤解)もよく使われます。
¿Podemos precisar este punto antes de avanzar?
(進む前にこの点をはっきりさせましょうか?)
曖昧なままことが進むと、後で問題になることがあるため、重要な場面では常に確認が重要です。
➤ 「はっきりさせる」はaclararの他にprecisarが使えます。precisarは「特定する」「正確に述べる」というニュアンスがあり、特にビジネスや専門的な場面で使われることが多いです。一方、aclararは日常会話でもよく使われ、「曖昧な点を解消する」や「明確にする」という意味合いが強いです。
¿Este término incluye todos los servicios que discutimos?
(この条件は、私たちが話し合ったすべてのサービスを含んでいますか?)
契約や合意の内容が完全に理解されているか確認するための表現です。後で誤解が生じないように、サービスや条件を明確にすることが目的です。
¿Este acuerdo se puede modificar si surge alguna circunstancia imprevista?
(予期しない事態が発生した場合、この合意は変更される可能性はありますか?)
突発的な状況に備えて、契約条件が変更される可能性があるかどうかを事前に確認する表現です。
Quisiera tener claro cómo se aplicarán estos términos en la práctica.
(これらの条件が実際にどのように適用されるのか明確にしておきたいです。)
合意内容が実務にどのように反映されるかを確認する表現です。実務レベルでの具体的な運用を把握するために役立ちます。
¿Está claro para todos lo que hemos decidido?
(我々が決めたことは全員にとって明確ですか?)
合意形成の際に最終確認を取る重要なフレーズです。
Es importante que no queden dudas sobre esto.
(これについて疑問が残らないようにすることが重要です。)
スペイン語圏では柔軟性が重視されますが、曖昧さを残さないためには明確な確認も不可欠です。
Me gustaría que definiéramos con precisión los roles y responsabilidades.
(役割と責任を正確に定義したいと思います。)
プロジェクトやタスクでの役割分担が曖昧な場合に使います。責任の所在を明確にすることで、後のトラブルを防ぎます。
Si es posible, me gustaría formalizar los términos por escrito para mayor claridad.
(可能であれば、より明確にするために条件を文書化したいです。)
スペイン語では俗にPapelito hablaと言います。これは「書類がものを言う」と言う意味で、口頭での約束や言葉よりも文書化されたものが重要であることを強調しています。
スペイン語圏では口頭での合意が一般的な場合もありますが、文書化することは重要です。
このフレーズは、誠実さとプロフェッショナリズムを示し、相手に敬意を払いつつ文書化を依頼するために役立ちます。
異文化理解の視点
スペイン語圏、特にラテンアメリカでは、契約内容や合意事項が他の地域に比べて曖昧になることが多いと言われています。これは、文化的な背景やビジネス慣習が影響しており、明確に決めるよりも柔軟な解釈を好む傾向があるからです。いくつかの要因を見てみましょう。
人間関係を重視する文化
スペイン語圏では、ビジネスにおいて人間関係が非常に重要です。そのため、契約書の細かい文言よりも、信頼や口頭での合意が優先されることがあります。その結果、契約内容が少し曖昧になることもあります。
柔軟性の重視
特にラテンアメリカでは、ビジネスの状況が変わりやすく、計画や契約が変更されることを前提にしている場合も多いです。これにより、契約内容に若干の曖昧さや変更の余地が残されることがあります。
「ノー」と言わない文化
多くのスペイン語圏の国々では、特にメキシコでは、相手を直接否定するのを避ける傾向があります。そのため、曖昧な返事をして、相手が合意したと思ったことが、実はそうではなかったということもあります。
同意が覆りやすい
口頭や非公式な形でなされた合意は、状況が変わると再交渉されることがあります。状況の変化や新たな情報が得られた場合、当初の合意が再交渉の対象になることが珍しくありません。書面での契約でも、条件付きの合意や曖昧な表現が含まれていることがあります。
契約の遵守に対する態度
スペイン語圏の国では、契約や締め切りに対して少し緩い姿勢が見られることがあります。そのため、契約後に再交渉されたり、合意が変わることも時々あります。
こうした文化的な背景を理解して、契約内容をできるだけ明確に文書化し、細かい点まで確認することが大切です。また、事前にお互いの期待や理解をしっかり話し合って、曖昧な点をなくすことがスムーズなビジネスの鍵になります。
曖昧な表現がビジネスにおいて誤解を生むことを避けるためにも、今回紹介したフレーズを使って、相手とのコミュニケーションを円滑に進めましょう。
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